らしくないことをして呆れられた話③




それから2年後ー
えっ…えええ!?
鉄板焼き居酒屋の店長から
突然連絡が来た
ご無沙汰してますっ
えりたですっ
ご連絡ありがとう
ございます〜!?
どうも
お久しぶり
です
実は俺
自分の店を
持つことになって…
求人広告を
お願いしたいんだよ
えっ……
私で…
いいんでしょうか…
まぁいろいろ
話したいこともあったし
いいきっかけかなと
思って
店長改めS様は
以前の鉄板焼き居酒屋について
話してくれた
会社の経営が傾いていて
給与もろくにもらえて
なかったこと
広告を出す予算も
もちろんなかったこと
広告業者は全て
断っていたのに
新人営業が突然やってきて
仕事もらうために
食べに来たのが見え見えで
腹が立って
露骨に
嫌な態度をとってしまい
それをずっと
気にしていたこと
ごめんね…
そんな…!
悪いのは
私ですから…!
でも元気そうで
よかった
まだ求人営業
がんばってたんだね
店長も自分の
お店を持つだなんて
すごいですね
ここ広くていいでしょ?
古いから激安で
借りられたんだよ
雰囲気が少し
以前の鉄板焼き屋さんに
似てるような…
そうなんだよ!
前の店みたいに
お客様とスタッフみんなの
距離が縮まる店を
目指したくてさ…
力を貸して
くれないかな
はい…!
それから頻繁に求人広告を
出してくれるようになり
S様とは
長いお付き合いになった
でもーーー
たまにふと考える
もし私があのとき
営業7年目とかの中堅社員で
あの鉄板焼き居酒屋を
担当することになっていたら
どうしてただろう…?
おそらく会社ホームページや
他社の広告出稿状況を
調べて
あーハイハイ
この会社はしばらく
なさそうだな…
「見込みが少ない」と判断して
そっとしていたかもしれない
鉄板焼き居酒屋が
閉店したことも
新店がオープンしたことも
何も知らずに
過ごしていたかもしれない
そう考えると
新人営業時代の失敗は
決してムダではなかったような
気がする
いらっしゃい!
予約ありがとね!
職場の方たち
連れてきました
本日はお世話に
なります!
S様と
新しいお店を
心から
応援したい気持ちに
なれたのだから
おわり

2年後に店長と再会。そこで知った当時の実情。

それから2年後、突然店長から連絡をもらいました。以前の会社を退職し、自分で新しい飲食店を立ち上げるので求人広告を出したいとのことでした。

当時は会社の経営が傾いていて給与もろくにもらえず、とても広告を出せるような状況ではなかったそうです。そんな状況も知らず、仕事をもらうためにわざとらしく食べにきた営業の私。本当に申し訳なかったなと思います。

しかし店長も、嫌な態度をとってしまったことを気にしてくれていたようです。今回の再会を機に、お互いのわだかまりがとることができてよかったです。

それから求人広告を通じて、長い間取引をすることができました。私が新人営業時代に失敗をしたからこそ繋がったご縁。そう考えると、失敗することは決して悪いことではないのかなと思いました。